2020.5.27
令和2年度の当センターの活動予定の一つに「通院困難患者の調査と課題抽出」がある。
これは在宅医療介護連携推進事業における「医療・介護連携の課題抽出と対応策の検討」にあたる。
疾病を抱えた要介護者の治療継続の一つに通院手段の確保があり、適切な医療を受けるために生活支援たる介護サービスの協力が必要となる。
今年度の具体的な取り組みは、通院困難利用者の実態、訪問診療や通院介助サービス量の需要及び供給量の調査、供給増へ向けた関係者との課題抽出を行う予定だ。
昨年度当センターが居宅介護支援事業所を対象に行った調査では、北見市内で要介護認定を受け訪問診療を受けている利用者は170名いた。また訪問診療が必要となる可能性のある利用者数は220名であった。ちなみにその約半数が「通院介助に身体介護をサービスをつけている」ことであった。なので今年度は通院介助サービス量について詳しい調査と課題を見つけることにした。
訪問診療の対象者を調べる方法として、前述の「通院介助に身体介護をサービスでつけている」や「受診すると(待ち時間などが長くて)2~3日体調が悪くなる」などの該当者を調べると「需要量」が分かる。そうすると訪問診療の現状件数からどのくらい今後の「供給量」を増やせばよいかは引き算できる。例えていうなら今立っている山の位置と、これから登ろうとする山頂との差ということになる。上記の調査結果からは220名の訪問診療の需要があることになる。
理屈は簡単だけれど難しいのが「訪問診療を求める患者数」がイコール「訪問診療をすべき患者数」ではないことだ。
医療と介護の連携の意味の一つは「限られた医療と介護資源が協力し合い地域住民が長く在宅で暮らせるようになる」ことであるから、できるだけ訪問診療を必要しない身体状態が続くことが望ましい。安易に訪問診療を選択できる環境は「限られた医療と介護資源の活用」という視点からは望ましくない場合もある。なぜなら都市部と比べ地方は医師数が少ない。外来診療を訪問診療に切り替えることはその医師の外来診療の時間を削ることになる。在宅医療支援診療所や訪問診療が増えることは望ましいけれど、ただ増やしたとしても地方では医療資源の診療総量が増えない(どころか減少している)ため根本的な解決は難しい。
じゃあどうしたらいいのか。課題の根っこを考えてみた。訪問診療を必要とする患者「像」の関係者間の認識の共有ができていないことではないかと考えた。それは通院診療から訪問診療へ切り替えるべき患者の状態の基準を明らかにすることではなく、通院介助サービス量が不足しているから訪問診療すべきだなど、社会的な理由を訪問診療の理由にすることでもない。
関係者のもつべき認識は基準やコスト評価ではなく「通院困難イコール訪問診療」という呪縛から一旦は離れ、訪問診療以外の通院方法、または通院頻度を下げる方法(オンライン診療)など、なるべく今の生活スタイルを維持するべきだという認識が関係者で一致して個々のケースへ対応していくことのように思えた。
基準やルールづくりなど、地域や医療と介護の連携を推進する事業に取り組む者として耳の痛い結論となった。「急がば回れ」ということか。