地元のロータリークラブにお招きいただき、卓話をしました。
ロータリークラブの存在は知っていましたが例会に行くのは初めてです。社会の第一線で活躍している経営者や役員、医者、弁護士、薬剤師、会計士、住職など専門職をされている方が入会していらっしゃいます。また卓話とは、例会の会食後に開催される小演説の事のようでした。
テーマは「人口減少社会における医療と介護の連携と意思決定支援」についてお話しました。内容を以下にご紹介いたします。
講演要旨
- 北見市の施設等で働く介護職員は令和元年から令和4年の3年間で345人減少した。市内の開業医も高齢化している。
- 人口減少社会によりこれまでの医療と介護サービスが持続出来なくなる時代が間もなく到来します。どうすればいいのか。
- 対策は住民自身が健康でかつ介護を受けないでいる自主的な取り組み。その上で医療と介護が協力して過不足のないサービスを提供できる仕組みが求められる。
- さらに大切なことは、やがて来る自分の「死」に際し、どのような医療・介護サービスを受けたいか自身で考えるとともに、日頃からご家族等と話し合っておくこと。
北見市の人口動態と医療・介護資源の減少
- 2040年は団塊の世代が全員90才以上になる年で、日本の死亡者数がピークに達する。
- 北見市の65才以上人口数はゆっくり減少するが、85才以上人口は、2025年から2040年の15年間で1.4倍に増加する。
- 85才以上の要介護認定率は57.7%(全国平均)であり、北見市では2030年から介護の需要がさらに数十年続く。
- 医師、特に訪問診療を実施する医療機関や医師が少ない。開業医も高齢化している。
- 介護職員が高齢化し、かつ減少している(3年間で350人減少)。
- 北見市における自宅死や老人ホーム死は、道内他市町に比べ相対的に高い。
- 要介護認定における要支援(1・2)など、軽度者の悪化率が高い。
2040年の北見地域の医療・介護の予測(何も手を打たなかった場合)
医療の様子
- 高齢医師診療所が複数廃業。病院へ高齢の外来患者が急増。待ち時間を嫌う患者の受診控えが進みその結果、高齢者の救急搬送数が増加する。
- 救急医療機関は認知症を併存疾患とする入院患者対応を忌避する(現在もですが…)。疾病は治癒しても認知機能低下が進行し、自宅退院困難な患者が医療機関で多く産出されるが退院先がない。
- 高齢救急患者で救急ベッドが埋まり、集中治療が必要な患者が入院治療できない。
介護の様子
- 介護支援専門員が不足し、ケアプラン作成が追いつかない。また介護職員不足で施設のベッドに空床はあるが介護職員不足のため、入所できない。
- 急性期病院から直接自宅退院する認知症・高齢者が増加。介護するヘルパーや家族がおらず、「自宅で一人死」のニュースが毎日流れる。
- 適切な介護サービスが受けられないので、軽度者(要支援)があっという間に重度化する。
北見市における在宅医療と介護の課題
- 通院できなくなると、医師の診察が受けられない(医療難民:訪問診療を行う医療機関や医師が不足)
- 自宅や施設で暮らしたいと思っていても暮らせない(介護難民:介護福祉士やケアマネジャーが急激に減少している)
- 救急で病院運ばれた際、どこまで治療をするか。本人の希望が不明確なため、救急医から短時間で家族が決断を迫られる(人生会議(ACP)の認知度が低い、人生会議は家族のため)
- 自宅や施設で暮らせないと退院できず、救急病院で新しい救急患者さんの受け入れができない大きな社会問題となる(介護職不足の問題は救急医療の問題とつながり、救急医療が崩壊)
対策(今暮らしている場所で住み続けけられるためにどうしたらいいか)
- 話し相手や友達付き合いを欠かさない(他者との交流)。孤独はタバコより健康に悪い。
- 定期的な運動を行う(近所の体操教室など)。高齢でも筋力は向上します。
- 健康な方は、近所の弱ってきた方を助ける。手助けは生きがいにつながるので、自分が将来困った時でも助け合える近所づきあいをしておきも認知症が多少進んでも自宅で暮らし続けられるようにする。
- どんな暮らしが自分にとって大切なのかを家族で話しておく(推定意思)。急病の時(もしもの時)にどこまでの治療を受けたいか、ご家族が困らないようにしておく。
ロータリークラブへの期待
地域包括支援センターが進める住民主体の通いの場の活動にロータリークラブからも協力をお願いしたい。
介護や看病で頼れる人がいない割合は、高齢の独居男性ではおよそ6割であり、複数人数の世帯(夫婦のみ世帯や高齢者以外も含む世帯)であっても3割程度は頼る人がいないという全国の調査結果もある。
身寄りのない高齢者の生活上の多様なニーズ・諸課題等の実態把握調査 沢村香苗 日本総合研究所 オピニオン 2024年04月19日
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=107744
高齢期は未経験の出来事の連続。特に高齢期から死後にかけては、自分では行いきれないことが多く発生するため、いかに他者の助けを得られるかが非常に重要なカギを握っている。これまでは親族が近くにいて、必要な時には柔軟な形で助けてくれることが社会的な前提となってきたが、現実にはその前提は崩れつつある。
現在北見市の一部の地域包括支援センターでは「住民主体によるの通いの場」づくりを進めている。行政から押し付けられたプログラムではなく、住民自身が主体的に自分自身の介護予防に取り組むために、近所や地域で身近に人が集う場所をつくり、定期的な体操や交流、困りごとのお手伝いなど小さい単位自主的に実施する地域の活動。
ポイントは他人のためにちょっとずつ自分でできることで協力することだ。ボランティアという感じではなく、「知り合いだからちょっと助けている」という感覚だ。こういった「人の役に立っている」という感覚。
社会の第一線で活躍している経営者や役員などで構成するロータリークラブの皆さんもこの活動を知り、協力して頂けるようになると大きな力なる。地域にはリーダーが必要です。今後「ロータリークラブが地域を救う」という流れになることを期待します。
お招きいただきありがとうございました。