令和6年4月に投稿予定でしたが、下書きのまま放置されていたことに気づきました。年度の折り返しを過ぎてしまいましたが、投稿いたします。
- 2024年度からの在宅医療・介護連携推進事業の事業項目の再編について
2014年に介護保険法が改正され、翌2015年度から市町村が行う事業として、地域支援事業に在宅医療・介護連携推進事業が位置づけられました。その後、2019年度から北見市では本事業を医療法人社団高翔会北星記念病院へ「北見市医療・介護連携支援センター事業」が委託され実施してきました。
過去5年間の事業を振り返り、今後北見市における人口減少、特に医師・看護師等の減少による医療資源の縮小と介護支援専門員・介護職員等の減少を踏まえ、5年後の2029年以降を見据えた北見市における地域包括ケアシステム全体の構築状況を、在宅医療・介護連携推進事業の立場から到達点を示すとともに、毎年度の事業の進捗や評価とその達成状況を明らかにする必要があると考えました。
そこで2024年度からは本事業の目的である「切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築」の構成要素である「日常の療養支援」「入退院支援」「急変時の対応」「看取り」の4つの場面を事業の機能性の視点から組み直し、「多職種連携・リハビリテーション」、「入退院支援・急変時の対応」、「看取り・日常の療養支援」の3つに統合・再編します。さらに5年後の2029年に北見市が目標とすべき状態の実現に資するよう事業が機能しているかどうかを毎年点検できるようにします。よって毎年の点検の結果、成果が出ていない、成果に貢献しない計画は見直しを行い、同じ成果を挙げることを目的とした別の計画を再検討し、効率性の高い取り組みへ重点化します。また事業の点検にあたっては、株式会社日本総合研究所が開発した「地域包括ケアシステムの構築状況の点検ツール」を用いて実施します。
視点 | 視点の目的 | 目的達成の概要 |
多職種連携・リハビリテーション | 高齢者がリハビリテーション等を活用しながら出来る限り心身機能や生活行為の回復と維持を図っている。 | 多職種が連携した効果的な介護予防やリハビリテーションを活用することで、高齢期のフレイルの進行を抑えたり、入退院があっても継続して状態を維持したり悪化を予防したりします。地域ならではの暮らし方や資源の状況を踏まえた介護予防やリハビリテーションを利用しやすくします。 |
入退院支援・急変時の対応 | 高齢者が、急変時を含め、入退院があっても切れ目のないケアを利用でき、生活を継続している。 | 高齢期は日常生活で医療・介護を必要とし、あるいは状態が急変して入退院が必要になります。日常の療養をはじめ、急変時の対応と入退院時にも、情報共有や計画作成が円滑に行われるようにします。 |
看取り・日常の療養支援 | 本人の希望に応じた日常療養から看取りまでの体制を整え、提供できている。 | 人生の最終段階において望む場所で看取りが行えるように、日常の療養支援の段階から連続的に医療と介護が密に連携して支援する必要があります。医療と介護関係者で本人の意思を共有し、状況が刻々と変わる中でも円滑な連携が行われるようにします。 |
Plan(計画) | 地域の目指すべき姿 | 高齢者がリハビリテーション等を活用しながら出来る限り心身機能や生活行為の回復と維持を図っている。医療・介護関係者の多職種連携により、高齢期のフレイルの進行を抑えた介護予防や、入退院があっても継続して状態を維持し、悪化が予防されている。高齢者が自身の状態に合った形で、機能回復やセルフケアに取り組んでおり、役割や生きがいを持ちながら暮らしている。 |
現状分析と課題抽出 | 要介護認定を更新した方のうち、要支援者の約54%が以前の認定結果から悪化している。(令和4年度調査より)介護支援専門員がケアプラン立案の際に利用者の予後予測について医療専門職の助言を受ける仕組みがなく、利用者の身体機能が低下している場合がある。適切なケアマネジメント手法を理解している介護支援専門員や医療専門職が少なく、介護サービス利用者の疾病の悪化や介護の重度化が起きている場合がある。多職種間の情報共有システムである北まるnetが一部の機関・事業所でしか利用されておらず、患者・利用者の情報共有が不足している。医療機関、居宅介護支援事業所、高齢者施設や介護保険事業所で口腔・栄養・運動の一体的な取り組みや情報の連携が不足しており、介護サービス利用者の疾病の悪化や介護の重度化が起きている場合がある。 |
2029年度の到達目標 (下線部は要協議) | 要介護認定を更新した方のうち、要支援者の5割が以前の認定結果から改善または維持している。適切なケアマネジメント手法を用いてケアプランを立案する介護支援専門員が7割となっている。多職種間の情報共有システムである北まるnet(グループセッション)を活用する有床医療機関および居宅介護支援事業所の割合が7割となっている。口腔・栄養・運動に関する相談・助言の窓口が職能団体で開設され、ケアマネジャー等からの相談に対する助言を受けている。(訪問看護、リハビリテーション団体3つ、栄養士会、歯科医師会は開設済。) |
Do(実行) | 2024年度の活動 | 北見市が主催する「自立支援型地域ケア個別会議」にて、適切なケアマネジメント手法を活用した個別事例検討会の事例集の作成ならびに運営に協力する。医療機関と介護事業所等が住み慣れた地域で暮し続けられ」という目標を共有することを目的に、「第3回北見市医療と介護の実践報告会」を開催する。要介護者の重度化予防のため、通所サービス事業所の組織化と医療職の活用支援を目的として、通所サービス意見交換会及び通所サービス事業所訪問会を開催する。適切なケアマネジメント手法を活用した多職種連携の基盤整備を目的として、北海道理学療法士会道東支部、北見市地域包括支援センター連絡協議会および北見地域介護支援専門員連絡協議会と協働して「適切なケアマネジメント手法を活用したケアプラン支援事業」を実施する。(2024年度の新規事業)ケアマネジメントにおける多職種連携推進の効率化を目的に、北まるnetグループセッションの活用例をケアマネジャーや医療機関へ周知する。 |
Check(評価) | 到達目標に対する進捗 | 要支援者(要支援1,2)および要介護者(1,2)の要介護認定更新結果の悪化率が令和4年度調査に比べ10%低減している。適切なケアマネジメント手法を用いてケアプランを立案する介護支援専門員の割合が約50%になっている。(令和5年度は25%)北まるnet(グループセッション)を活用する有床医療機関および居宅介護支援事業所の割合が80%になっている。(令和5年度は62%)職能団体で開設する口腔・栄養・運動に関する相談・助言の窓口の増加。自立支援型地域ケア個別会議での事例検討の件数と課題の抽出状況。 |
Action(改善) | 改善の実施(評価の視点) | 地域の高齢者のフレイル等のリスクの状況を踏まえ、効果的なリハビリテーションや介護予防がケアプランを通じて実施できているか。地域住民の人口構成や、要介護状態となる要因の傾向、社会資源の状況を踏まえ、必要なリハビリテーションや介護予防サービスが機能しているか。関連する施策・事業同士と連携できているか。 |
Plan(計画) | 地域の目指すべき姿 | 高齢者が急変時を含め、入退院があっても切れ目のないケアを利用でき、生活を継続している。高齢者が急変時を含め、入退院があっても継続して状態を維持し、悪化が予防されている。退院後に、円滑な療養・介護へと接続できる環境が整っている。 |
現状分析と課題抽出 | 要介護者の入退院連絡率は85%以上を維持しているが、医療機関からケアマネジャーに対する退院前連絡が退院日直前になっており、退院後の介護サービス調整が間に合わない場合がある。北まるnet救急医療情報へ登録している高齢者は全体の約10%に留まり、急変時にかかりつけ医、既往歴や投薬内容が分からず、救急医療機関で治療の開始が遅延している場合がある。要介護者の退院時療養指導と本人の暮らしに対する意向の両者を踏まえたケアプラン立案が難しく、疾病の再発や悪化を招いている場合がある。訪問介護サービス資源や介護支援専門員が不足しており、要介護者のケアプラン立案や生活支援サービスが不足し、介護の重度化を招いている場合がある。在宅や施設で暮らす住民が急変時に本人の望む医療・ケアの意思決定をしておらず、搬送先の救急医療機関で救命か延命かの処置に家族が苦慮している場合がある。急変時に本人の望む医療・ケアの意思決定をしておらず、本人の意思が実現できていない場合がある。 |
2029年度の到達目標 | 医療機関からケアマネジャーに対する退院前連絡が5日以上前にあり、退院後のスムーズな介護サービス利用につながっている。北まるnet救急医療情報へ登録する利用者が北見市内高齢者の30%になる。特に単身世帯や高齢者夫婦世帯の70%以上が北まるnet救急医療情報に登録しており、救急車要請時に救急隊へ活用され、搬送時間の短縮につながっている。ケアマネジャーが立案するケアプランに利用者本人の暮らしに対する意向が記述されており、入院時からの退院支援に活用され、入院期間の短縮につながっている。生活支援体制整備事業の推進により、北見市内の多くで住民主体による体操教室や生活支援サービスが実施されており、軽度者は住民が、要介護の重度者のケアは介護職員へと役割分担が進み、退院支援の際に介護職員等が不足していてもケアマネジャーが住民主体のインフォーマルサービスを活用できている。急変時に本人の望む医療・ケアの意思決定ができており、情報共有の仕組みができている。急変時に本人の意思を実現できるよう、救急隊、医療機関、ケアマネジャー等の協力により、搬送ルールや医療機関での対応に一定の取り決めをまとめた「北見市版DNARプロトコール」が策定され、実施できている。 |
Do(実行) | 2024年度の活動 | 入退院における医療機関とケアマネジャーとの連携についての現状と課題を把握するため、ケアマネジャーと有床医療機関を対象に入退院連絡調査を行う。調査結果は北見市が開催する「北見市医療機関・在宅ケアマネジャー連絡会議」にて報告するとともに、課題について協議する。医療・介護連携窓口の把握と周知を行う。入退院等調整のための窓口一覧を北見保健所・保健所管内町と共同し更新するとともに、令和6年10月に配布する。平時の連携のための窓口一覧を北見保健所・保健所管内町と共同し更新するとともに、令和6年10月に配布する。対象は医療機関、歯科医院、 薬局、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、 小規模多機能型居宅介護とする。在宅医療・救急医療ワーキングチーム会議を開催し、以下の取り組みを実施する。患者、利用者や入所者に対するACPの推進在宅ケアマネジャー等に対するACPの研修を企画、実施する。地域住民に対しACPの啓発を目的とした市民講座を企画、実施する。施設入所時におけるACPの引継ぎのあり方について検討する。心肺蘇生を希望しない高齢者に対する救急医療についての課題を調査する。救急隊におけるDNAR意思の救急要請事案について調査を行う。救急医療の現場における心肺蘇生を希望しない高齢者に対する診療上の課題について調査を行う。心肺蘇生を希望しない高齢者が救急要請した場合の不搬送ルール(要件やプロトコル等)について検討を行う。高齢者施設に対する救急対応の向上高齢者施設に対する救急対応やACP等の課題についての調査を実施し、短期及び長期の課題抽出と対応策を検討する。多様な種類の高齢者施設の意見を収集、反映させるため、本会議メンバーにサービス付き高齢者向け住宅等の高齢者施設代表を加えることを検討する。 |
Check(評価) | 到達目標に対する進捗 | 医療機関からケアマネジャーに対する退院前連絡が5日以上前の割合。北まるnet救急医療情報へ登録する利用者割合。高齢者単身世帯および高齢者夫婦世帯の登録割合。ケアプランに利用者本人の暮らしに対する意向が記述されている割合。 |
Action(改善) | 改善の実施(評価の視点) | 令和6年度の取り組み状況を踏まえ検討を行う。 |
Plan(計画) | 地域の目指すべき姿 | 本人が望む医療・ケアの意思を表明している。本人の希望に応じた看取りの体制が整い、その意思が実現できている。通院が困難になった際も訪問診療や訪問看護サービスを受け、住み慣れた場所で生活できている。心身機能が低下してもケアマネジャーや生活支援サービスが整い、住み慣れた場所で生活できている。 |
現状分析と課題抽出 | 死期が迫っていない利用者に対しACPを提案しているケアマネジャーは8.7%である一方で、状況に応じACPを提案しているケアマネジャーは66%であった。高齢者施設で入所者の急変時に備え事前指示書を作成していないと回答した施設が61%であり、急変時の本人・家族の意思が反映、実現できていない場合がある。救急医療機関では本人の意思が確認できない場合、代理意思決定者(家族など)がいない場合や、その場にいても判断がすぐにできないことがある。自宅や施設で看取りを行う方針だったが家族や職員が慌てて救急搬送を要請した場合、救急隊の不搬送のルールがなく、搬送せざるを得ない状況がある。人生の最終段階における医療・ケアに対する住民の関心が低く、急変時に納得した意思決定ができていない。訪問診療を実施できる医療機関が限られており、訪問診療を希望しても受けられない場合がある。心身機能が低下した場合、家庭の介護力が不足して施設等へ入所している住民がいる。 |
2029年度の到達目標 | 北まるnet救急医療情報へ住民のACPやDNARを登録する利用者が北見市内高齢者の30%になる。特に単身世帯や高齢者夫婦世帯の70%以上が登録しており、救急車要請時に救急隊へ活用され、本人の医療・ケアに対する意思の実現につながっている。急変時に要介護者の望む医療・ケアの意思決定が平時からケアマネジャーとともに70%以上できており、かつその情報共有の仕組みができている。急変時に本人の意思を実現できるよう、救急隊、医療機関、ケアマネジャー等の協力により、搬送ルールや医療機関での対応に一定の取り決めをまとめた「北見市版DNARプロトコール」が策定され、実施できている。訪問診療を希望する住民が訪問診療を受けられる体制が整っている。心身機能が低下しても住民主体の生活支援サービス等が整い、住み慣れた場所で生活できている。 |
Do(実行) | 2024年度の活動 | 在宅医療・救急医療ワーキングチーム会議を開催し、以下の取り組みを実施する。(再掲)患者、利用者や入所者に対するACPの推進在宅ケアマネジャー等に対するACPの研修を企画、実施する。地域住民に対しACPの啓発を目的とした市民講座を企画、実施する。施設入所時におけるACPの引継ぎのあり方について検討する。心肺蘇生を希望しない高齢者に対する救急医療についての課題を調査する。救急隊におけるDNAR意思の救急要請事案について調査を行う。救急医療の現場における心肺蘇生を希望しない高齢者に対する診療上の課題について調査を行う。心肺蘇生を希望しない高齢者が救急要請した場合の不搬送ルール(要件やプロトコル等)について検討を行う。高齢者施設に対する救急対応の向上高齢者施設に対する救急対応やACP等の課題についての調査を実施し、短期及び長期の課題抽出と対応策を検討する。多様な種類の高齢者施設の意見を収集、反映させるため、本会議メンバーにサービス付き高齢者向け住宅等の高齢者施設代表を加えることを検討する。北見市医療・介護連携推進事業に係る普及啓発委託事業(住民主体のまちづくり)の開催に協力する。本人の望むこれからの暮らしや緊急時の意向が反映されるよう、ケアマネジャーをはじめとした意思決定支援に関する研修会を開催する。生活支援体制整備事業における住民主体の体操教室や生活支援サービスの推進に協力する。 |
Check(評価) | 到達目標に対する進捗 | 在宅看取り割合(自宅死、老人ホーム死)。→令和4年度までしか確認できないので判定は令和7年度となる。看取りを実施する体制(医療機関、介護事業者数)。ACP 等意思決定支援の医療機関や介護保険施設での実施状況。終末期救急搬送件数とDNARの実施数(割合) 。 |
Action(改善) | 改善の実施 | 令和6年度の取り組み状況を踏まえ検討を行う。 |
- 在宅医療・介護連携推進事業における医療・介護連携に関する相談支援
- 医療機関や介護保険事業所等からの医療・介護連携に関する相談支援を行う。
- 医療介護連携に関する研修会の講師依頼等に対応する。
- 北見市医療・介護連携支援センターの周知
- 医療・介護連携の課題や取り組み周知のため、「北見市医療・介護連携支援センターニュースレター」を3回発行する。(13号~15号)
- 北見市の在宅医療介護連携推進事業の活動や医療・介護連携に関する話題等の周知のため、「北見市医療・介護連携支援センターホームページ」を更新する。なお、同ホームページ掲載の更新周知のため、同センターのフェイスブックも活用し、周知を行う。
- 第8次北海道医療計画において、北見在宅医療圏域に北海道が指定する「在宅医療に必要な連携を担う拠点」の活動に北海道北見保健所とともに協力する。