身寄りなしの方の支援体制整備を関係者全体の課題へ

令和7年2月26日に北見市が開催した「令和6年度 医療機関・在宅ケアマネジャー連携会議」にて「身寄りなし患者の支援課題について」をテーマとしたグループワークを当センターが担当した。参加者は医療機関の入退院支援担当者と居宅ケアマネジャーである。

そもそも今回、なぜこのテーマにしたのか。これは以下のレポートを読み、非常に危機意識を私が感じたからであった。(以下レポート要旨)

人口減社会は個人を取り巻く地域や世帯・家族の縮小をもたらすばかりでなく、高齢期の暮らしへの影響、特に健康や介護の問題が顕在化して初めて「身近で手助けする人がいない課題」に直面することに気付いたからである。現に身寄りなしで困っている方はもとより、今現在は自分自身で身の回りをことができる方であっても、将来へ向けたの支援体制を整えておかなければならない。私の仕事はこれまで医療と介護の課題を取り扱ってきたけれど、この課題は将来生まれる社会課題として直ちに取り組まなければならないテーマだと感じた。
身近で手助けする人がいない場合、医療機関においては自宅退院への選択の可能性は小さくなる。また護保険サービス契約も怪しくなる。これまで「身近で手助けする人」の存在を前提としてきたサービスの大転換が求められる。

話しを連携会議へ戻します。

連携会議で「身寄りなし患者の支援課題」を協議するにあたり、居宅ケアマネジャーを対象に身寄りのない方の入退院支援に関わる調査を行った。調査にあたり必要なことは身寄りのない方の定義だ。そこで、㈱日本総合研究所が「介護職員等における身寄りのない高齢者等に対する支援の実態に対する調査研究事業(令和6年度 老健事業)」で用いた以下の定義を活用して調査をおこなった。

調査では北見市の居宅ケアマネジャー約200人のうち55人(回答率 27.9%)から回答を得た。調査結果をまとめると以下のことが判明した。

  1. 全ケース1,543ケース数中、身寄りなしの方がいると回答のあったケースは108(6.9%)で、将来の身寄りなしを含めると179ケース(10.9%)となり、要介護ケースの約1割であった。
  2. 要介護ケースにおける単身世帯率は37.0%で、高齢者夫婦世帯は59.0%であった。
  3. 要介護ケースにおける成年後見制度の利用率は14.8%であった。
  4. ケアマネジャーの法定外業務としていつもある(月1回)程度の内容は、郵便・宅配、書類作成の代行や発送であった。
  5. 法定外業務への対応は事業所の業務が無償で実施していた。
  6. 支援が難しい人への支援の際、助けになるのは、併設する事業所や同僚であった。
  7. 入院時に保証人・緊急連絡先等を求められる医療機関が多いとケアマネジャーが回答した。
  8. 身寄りのない方が介護保険サービスを利用できるようするために、必要だと思われることで最も多かったのは「医療機関や施設が保証人がいなくても入院、入所を受け入れてくれること」であった。
  9. 身寄りのない方の支援に対し「大きな負担感がある」と回答したケアマネジャーが約7割いた。

以上の結果から「身近で手助けする人がいない課題」に直面している方は非一定数いることが判明した。
医療機関とケアマネジャーの入退院支援に関する会議ということもあり、話題はケアマネジャーの業務負担をどう解消していくかという課題もあった。これはこれで解決をしていくとして、グループワークを終え「身近で手助けする人がいない課題」の解決へは今後、以下の手順でを進めることが必要だと感じる。

現状と課題の把握
「身近で手助けする人がいない課題」は各機関(行政・医療機関・介護サービス・その他)でどのように発生しているか、またどの程度に人数がいるか。
現在行われている支援
上記の課題を各機関(行政・医療機関・介護サービス・その他)はどのように対処しているか。今後対象者が増加した場合に持続可能かどうか。
今後立案すべき支援や対策
現に「身近で手助けする人がいない課題」に直面している方に対する対策は何か。
どういった団体を構成した協議体(既存の団体を含む)でで検討していくか。
将来の「身近で手助けする人がいない」予備軍の方に対し、現在取り組めることは何か。

また、この課題に取り組んでいる地域同士の情報交換も必要だと感じる。この課題はみなに関係するが、どこが主体的に扱うかが定まっておらす、その結果誰も取り扱わずただ見過ごされてしまう。

今後はこの身寄りのない方が抱える課題を地域全体の課題として各地域で取り組んでいくことが望まれる。

参考資料:身寄りのない高齢者の生活上の多様なニーズ・諸課題等の実態把握調査(日本総合研究所 2024年04月)

令和6年度 自立支援型地域ケア個別会議の事例集を公開しました。

本事例集は北見市が主催する自立支援型地域ケア個別会議で検討された事例(18事例)を医療介護支援センターでまとめました。

地域におけるケアマネジメントの質の向上を図り、高齢者の自立支援・介護の重度化予防に資する多職種による助言を通じ、以下を達成することを目的として開催されています。
1)地域におけるケアマネジメントの質の向上
2)地域における課題の抽出
3)適切なケアマネジメント手法の普及と活用の拡大

事例集では、ケースに対する医療専門職の助言内容、ケアマネジャーの支援内容の変化、そしてその結果を記載しました。
また記載にあたり、適切なケアマネジメント手法の基本ケア項目も掲載しています。
本事例集の活用により、助言の視点や具体的方法を知ることで、多くのケアマネジャーの方の支援内容の抜け、漏れを防ぐとともに疾病等が悪化せず生活を続けられる利用者支援と多職種連携推進の一助になればと考えます。

専門性の越境は多職種連携の進展につながるか

本稿は2025.2.1に発行した北見市医療・介護連携支援センターのニュースレター第15号に掲載したもの。いままでは医療介護関係者へのインタビューを記事にしていたが、諸般の事情で関が執筆した。これまで読後の感想をいただくことはなかったのだが、今回は色々な方からご意見を頂戴した。さらに意見が欲しいという訳ではないのだが、気をよくしてこちらにも掲載する。

事例検討における職能の専門性と意見・提案
 数年前まで、多職種が集まり事例検討を行う際、私が気になっていたことがありました。それは「医師として」とか「リハビリでは」といった自己の職能を前置きする発言です。もちろん医師でない者が診断や治療をすることはできません。そうではなく、職能を前置きすることで発言を自己擁護しているような態度を感じたのです。しごくもっともな話です。医療機関内で実施するカンファレンスのように、患者さんや利用者の情報をすべて知っているわけでもなく、発言の責任を負う院内の医療チームのメンバーでもありませんから当然です。きっとそれはよく知らない患者さんや利用者に対する「遠慮」のようなものなのかもしれません。多職種が意見をいう場では恐らくこういった遠慮という「配慮」が多職種連携による各職能の知見の効果を狭めたり、もう一歩連携を進めたいのに進まない楔形(くさび)のようなものだと私は感じていたのでしょう。
 そういう意味で多機関の地域関係者が集まる事例検討の場における多職種の発言は、「意見や提案」の扱いであり強制力はありません。であればもう一歩踏み込んで、多様な意見や職能の枠にとらわれない形で事例検討が実施できないものかと考えていました。こういった「意見」は提出された事例を今後展開する上で、新たなそして大きな各職種の「気づき」となり、地域での支援を広げる効果をもたらすでしょう。
 多職種による事例検討という事業の目的は、本人の意欲や強みを引き出し、生活の継続を支えられるような支援に近づけることです。こうした多職種とのやり取りが互いの視点の共有化につながり、連携の目的に近づきます。


共通言語の活用と地域支援の充実
 そこで北見市では令和5年度より地域ケア個別会議(北見市では「自立支援型地域ケア個別会議」と呼称しています)に適切なケアマネジメント手法を活用する運用を開始しました。従来の会議と異なるのは事例提供者の支援内容や多職種による助言や意見を適切なケアマネジメント手法における「基本ケア項目(44項目)」を共通言語として用いて検討することです。
 適切なケアマネジメント手法とは、要介護高齢者本人と家族の生活の継続を支えるために、介護支援専門員の先達たちが培ってきた知見に基づき、想定される支援を体系化し、その必要性や具体化を検討するためのアセスメント、モニタリングの項目を整理したものです。
 会議では最低限の事例紹介ののち、検討したい事項を基本ケア項目に従い事例提供者が説明します。数点の多職種による質問を経て、提供者の提示した基本ケア項目や、追加するべき支援について基本ケア項目が提案されます。
 適切なケアマネジメント手法を活用して効果的だと私が感じたのが、多職種は提案する基本ケア項目の理由「なぜこの支援が必要だと思うのか」を述べるだけで意見や提案が済むことでした。
 従来であれば支援の理由に留まらず、「こういう支援をしてはどうか」という支援内容も説明が必要です。しかし既に基本ケア項目に詳しく記述されているのです。短時間で意見が済めば多くの他の意見や提案を会議で展開することが可能になり、会議の効率化につながります。それだけではなく、年間を通じて基本ケア項目の番号の頻度を調べることにより地域のケアマネジメントの課題も抽出できる副産物となります。
 会議後に事例提供者は各職種から提案された意見と採用した意見のみならず、修正した支援内容と支援結果をA4サイズにまとめ会議運営者である北見市へ提出します。これに匿名性を確保した上で事例集としてまとめ、市内の多職種へ供覧するところまで実施します。これにより、多くの関係者が課題に対する支援のバリエーションを知り、かつ適切なケアマネジメント手法の普及につなげます。
 つまり会議の目的である、①地域におけるケアマネジメントの質の向上、②地域における課題の抽出、③適切なケアマネジメント手法の普及と活用の拡大に資する多職種による取り組みに繋がるようにしています。


薬剤師の発言による多職種連携の可能性
 北海道薬剤師会北見支部による研修会で、ある薬剤師の方の発言が印象に残りました。「これまで薬剤師は薬学的観点や薬剤管理についての助言・指導に留まっていた。これからは介護現場での視点を共有して、ケースに寄り添った気づきを薬剤師として伝える事が必要なのではないか」というものです。在宅医療や在宅ケア領域において多職種が連携する目的は利用者本人や家族の自立支援と生活の質の向上です。指導よりも介護現場での困りごとである、脱水・栄養失調、転倒・誤嚥、認知機能低下、生活不活発、慢性疾患の増悪、家族との関係の介入などに対し、いわば「越境した」気持ちで発言していくことがこれからの多職種連携の姿になると気づいたのです。


 地域の多職種連携では、チームワークモデルの3つの類型のうち、急性期やICUなど医師の指示に基づき、あらかじめ決められた役割をこなす「マルチモデル」ではなく、在宅・地域ケアチームのような、多職種間で役割固定がなく、横断的な支援を行う「トランスモデル」を意識したモデルが関係者に浸透していくような取り組みを今後も進めていきたいと思います。(下記図を参照)

医療・介護資源が減少する地域の取り組み

地元のロータリークラブにお招きいただき、卓話をしました。

ロータリークラブの存在は知っていましたが例会に行くのは初めてです。社会の第一線で活躍している経営者や役員、医者、弁護士、薬剤師、会計士、住職など専門職をされている方が入会していらっしゃいます。また卓話とは、例会の会食後に開催される小演説の事のようでした。

テーマは「人口減少社会における医療と介護の連携と意思決定支援」についてお話しました。内容を以下にご紹介いたします。

  • 北見市の施設等で働く介護職員は令和元年から令和4年の3年間で345人減少した。市内の開業医も高齢化している。
  • 人口減少社会によりこれまでの医療と介護サービスが持続出来なくなる時代が間もなく到来します。どうすればいいのか。
  • 対策は住民自身が健康でかつ介護を受けないでいる自主的な取り組み。その上で医療と介護が協力して過不足のないサービスを提供できる仕組みが求められる。
  • さらに大切なことは、やがて来る自分の「死」に際し、どのような医療・介護サービスを受けたいか自身で考えるとともに、日頃からご家族等と話し合っておくこと。
  • 2040年は団塊の世代が全員90才以上になる年で、日本の死亡者数がピークに達する。
  • 北見市の65才以上人口数はゆっくり減少するが、85才以上人口は、2025年から2040年の15年間で1.4倍に増加する。
  • 85才以上の要介護認定率は57.7%(全国平均)であり、北見市では2030年から介護の需要がさらに数十年続く。
  • 医師、特に訪問診療を実施する医療機関や医師が少ない。開業医も高齢化している。
  • 介護職員が高齢化し、かつ減少している(3年間で350人減少)。
  • 北見市における自宅死や老人ホーム死は、道内他市町に比べ相対的に高い。
  • 要介護認定における要支援(1・2)など、軽度者の悪化率が高い。
  • 高齢医師診療所が複数廃業。病院へ高齢の外来患者が急増。待ち時間を嫌う患者の受診控えが進みその結果、高齢者の救急搬送数が増加する。
  • 救急医療機関は認知症を併存疾患とする入院患者対応を忌避する(現在もですが…)。疾病は治癒しても認知機能低下が進行し、自宅退院困難な患者が医療機関で多く産出されるが退院先がない。
  • 高齢救急患者で救急ベッドが埋まり、集中治療が必要な患者が入院治療できない。
  • 介護支援専門員が不足し、ケアプラン作成が追いつかない。また介護職員不足で施設のベッドに空床はあるが介護職員不足のため、入所できない。
  • 急性期病院から直接自宅退院する認知症・高齢者が増加。介護するヘルパーや家族がおらず、「自宅で一人死」のニュースが毎日流れる。
  • 適切な介護サービスが受けられないので、軽度者(要支援)があっという間に重度化する。
  • 通院できなくなると、医師の診察が受けられない(医療難民:訪問診療を行う医療機関や医師が不足)
  • 自宅や施設で暮らしたいと思っていても暮らせない(介護難民:介護福祉士やケアマネジャーが急激に減少している)
  • 救急で病院運ばれた際、どこまで治療をするか。本人の希望が不明確なため、救急医から短時間で家族が決断を迫られる(人生会議(ACP)の認知度が低い、人生会議は家族のため)
  • 自宅や施設で暮らせないと退院できず、救急病院で新しい救急患者さんの受け入れができない大きな社会問題となる(介護職不足の問題は救急医療の問題とつながり、救急医療が崩壊)
  • 話し相手や友達付き合いを欠かさない(他者との交流)。孤独はタバコより健康に悪い。
  • 定期的な運動を行う(近所の体操教室など)。高齢でも筋力は向上します。
  • 健康な方は、近所の弱ってきた方を助ける。手助けは生きがいにつながるので、自分が将来困った時でも助け合える近所づきあいをしておきも認知症が多少進んでも自宅で暮らし続けられるようにする。
  • どんな暮らしが自分にとって大切なのかを家族で話しておく(推定意思)。急病の時(もしもの時)にどこまでの治療を受けたいか、ご家族が困らないようにしておく。

地域包括支援センターが進める住民主体の通いの場の活動にロータリークラブからも協力をお願いしたい。

高齢期は未経験の出来事の連続。特に高齢期から死後にかけては、自分では行いきれないことが多く発生するため、いかに他者の助けを得られるかが非常に重要なカギを握っている。これまでは親族が近くにいて、必要な時には柔軟な形で助けてくれることが社会的な前提となってきたが、現実にはその前提は崩れつつある。

現在北見市の一部の地域包括支援センターでは「住民主体によるの通いの場」づくりを進めている。行政から押し付けられたプログラムではなく、住民自身が主体的に自分自身の介護予防に取り組むために、近所や地域で身近に人が集う場所をつくり、定期的な体操や交流、困りごとのお手伝いなど小さい単位自主的に実施する地域の活動。

ポイントは他人のためにちょっとずつ自分でできることで協力することだ。ボランティアという感じではなく、「知り合いだからちょっと助けている」という感覚だ。こういった「人の役に立っている」という感覚。

社会の第一線で活躍している経営者や役員などで構成するロータリークラブの皆さんもこの活動を知り、協力して頂けるようになると大きな力なる。地域にはリーダーが必要です。今後「ロータリークラブが地域を救う」という流れになることを期待します。

お招きいただきありがとうございました。

新潟県在宅医療推進フォーラムのアーカイブ配信が開始されました

関の基調講演が19:18より視聴できます。
「地域共生社会の実現に向けた医療介護連携とは」
講師 北見市医療・介護連携支援センター(北星記念病院)センター長/関 建久
座長 新潟県医療ソーシャルワーカー協会 会長/坂詰 明広

お招き頂きました皆様に感謝申し上げます。

セミナー等のご案内

北見市医療・介護連携支援センターから、在宅医療・救急医療セミナーとケアマネジャーを対象としたACP研修会のお知らせのご案内です。

第2回在宅医療・救急医療セミナーのお知らせ
日時:令和6年11月22日(金)18:30~20:00
場所:北見市役所5階 505会議室・入札室
ご案内はこちら

https://www.nouge.gr.jp/center/info/20241122.pdf
お申込みはこちら
https://forms.gle/iFVzQDGz1AtJqzGo7
(締め切り11/18まで)

ご案内はこちら
https://www.nouge.gr.jp/center/info/20241213.pdf
お申込みはこちら
https://forms.gle/pKXJ7x8xZ56ejVmz7
(締め切り12/6まで)

令和6年度の北見市医療・介護連携支援センター事業を紹介します

令和6年4月に投稿予定でしたが、下書きのまま放置されていたことに気づきました。年度の折り返しを過ぎてしまいましたが、投稿いたします。

  • 2024年度からの在宅医療・介護連携推進事業の事業項目の再編について

2014年に介護保険法が改正され、翌2015年度から市町村が行う事業として、地域支援事業に在宅医療・介護連携推進事業が位置づけられました。その後、2019年度から北見市では本事業を医療法人社団高翔会北星記念病院へ「北見市医療・介護連携支援センター事業」が委託され実施してきました。

過去5年間の事業を振り返り、今後北見市における人口減少、特に医師・看護師等の減少による医療資源の縮小と介護支援専門員・介護職員等の減少を踏まえ、5年後の2029年以降を見据えた北見市における地域包括ケアシステム全体の構築状況を、在宅医療・介護連携推進事業の立場から到達点を示すとともに、毎年度の事業の進捗や評価とその達成状況を明らかにする必要があると考えました。

そこで2024年度からは本事業の目的である「切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築」の構成要素である「日常の療養支援」「入退院支援」「急変時の対応」「看取り」の4つの場面を事業の機能性の視点から組み直し、「多職種連携・リハビリテーション」、「入退院支援・急変時の対応」、「看取り・日常の療養支援」の3つに統合・再編します。さらに5年後の2029年に北見市が目標とすべき状態の実現に資するよう事業が機能しているかどうかを毎年点検できるようにします。よって毎年の点検の結果、成果が出ていない、成果に貢献しない計画は見直しを行い、同じ成果を挙げることを目的とした別の計画を再検討し、効率性の高い取り組みへ重点化します。また事業の点検にあたっては、株式会社日本総合研究所が開発した「地域包括ケアシステムの構築状況の点検ツール」を用いて実施します。

  • 2024年度からの事業項目の内容(再編後)
視点視点の目的目的達成の概要
多職種連携・リハビリテーション高齢者がリハビリテーション等を活用しながら出来る限り心身機能や生活行為の回復と維持を図っている。多職種が連携した効果的な介護予防やリハビリテーションを活用することで、高齢期のフレイルの進行を抑えたり、入退院があっても継続して状態を維持したり悪化を予防したりします。地域ならではの暮らし方や資源の状況を踏まえた介護予防やリハビリテーションを利用しやすくします。
入退院支援・急変時の対応高齢者が、急変時を含め、入退院があっても切れ目のないケアを利用でき、生活を継続している。高齢期は日常生活で医療・介護を必要とし、あるいは状態が急変して入退院が必要になります。日常の療養をはじめ、急変時の対応と入退院時にも、情報共有や計画作成が円滑に行われるようにします。
看取り・日常の療養支援本人の希望に応じた日常療養から看取りまでの体制を整え、提供できている。人生の最終段階において望む場所で看取りが行えるように、日常の療養支援の段階から連続的に医療と介護が密に連携して支援する必要があります。医療と介護関係者で本人の意思を共有し、状況が刻々と変わる中でも円滑な連携が行われるようにします。
  • 多職種連携・リハビリテーション
Plan(計画)地域の目指すべき姿高齢者がリハビリテーション等を活用しながら出来る限り心身機能や生活行為の回復と維持を図っている。医療・介護関係者の多職種連携により、高齢期のフレイルの進行を抑えた介護予防や、入退院があっても継続して状態を維持し、悪化が予防されている。高齢者が自身の状態に合った形で、機能回復やセルフケアに取り組んでおり、役割や生きがいを持ちながら暮らしている。
現状分析と課題抽出要介護認定を更新した方のうち、要支援者の約54%が以前の認定結果から悪化している。(令和4年度調査より)介護支援専門員がケアプラン立案の際に利用者の予後予測について医療専門職の助言を受ける仕組みがなく、利用者の身体機能が低下している場合がある。適切なケアマネジメント手法を理解している介護支援専門員や医療専門職が少なく、介護サービス利用者の疾病の悪化や介護の重度化が起きている場合がある。多職種間の情報共有システムである北まるnetが一部の機関・事業所でしか利用されておらず、患者・利用者の情報共有が不足している。医療機関、居宅介護支援事業所、高齢者施設や介護保険事業所で口腔・栄養・運動の一体的な取り組みや情報の連携が不足しており、介護サービス利用者の疾病の悪化や介護の重度化が起きている場合がある。
2029年度の到達目標 (下線部は要協議)要介護認定を更新した方のうち、要支援者の5割が以前の認定結果から改善または維持している。適切なケアマネジメント手法を用いてケアプランを立案する介護支援専門員が7割となっている。多職種間の情報共有システムである北まるnet(グループセッション)を活用する有床医療機関および居宅介護支援事業所の割合が7割となっている。口腔・栄養・運動に関する相談・助言の窓口が職能団体で開設され、ケアマネジャー等からの相談に対する助言を受けている。(訪問看護、リハビリテーション団体3つ、栄養士会、歯科医師会は開設済。)
Do(実行) 2024年度の活動北見市が主催する「自立支援型地域ケア個別会議」にて、適切なケアマネジメント手法を活用した個別事例検討会の事例集の作成ならびに運営に協力する。医療機関と介護事業所等が住み慣れた地域で暮し続けられ」という目標を共有することを目的に、「第3回北見市医療と介護の実践報告会」を開催する。要介護者の重度化予防のため、通所サービス事業所の組織化と医療職の活用支援を目的として、通所サービス意見交換会及び通所サービス事業所訪問会を開催する。適切なケアマネジメント手法を活用した多職種連携の基盤整備を目的として、北海道理学療法士会道東支部、北見市地域包括支援センター連絡協議会および北見地域介護支援専門員連絡協議会と協働して「適切なケアマネジメント手法を活用したケアプラン支援事業」を実施する。(2024年度の新規事業)ケアマネジメントにおける多職種連携推進の効率化を目的に、北まるnetグループセッションの活用例をケアマネジャーや医療機関へ周知する。
Check(評価)到達目標に対する進捗要支援者(要支援1,2)および要介護者(1,2)の要介護認定更新結果の悪化率が令和4年度調査に比べ10%低減している。適切なケアマネジメント手法を用いてケアプランを立案する介護支援専門員の割合が約50%になっている。(令和5年度は25%)北まるnet(グループセッション)を活用する有床医療機関および居宅介護支援事業所の割合が80%になっている。(令和5年度は62%)職能団体で開設する口腔・栄養・運動に関する相談・助言の窓口の増加。自立支援型地域ケア個別会議での事例検討の件数と課題の抽出状況。
Action(改善)改善の実施(評価の視点)地域の高齢者のフレイル等のリスクの状況を踏まえ、効果的なリハビリテーションや介護予防がケアプランを通じて実施できているか。地域住民の人口構成や、要介護状態となる要因の傾向、社会資源の状況を踏まえ、必要なリハビリテーションや介護予防サービスが機能しているか。関連する施策・事業同士と連携できているか。
  • 入退院支援・急変時の対応
Plan(計画)地域の目指すべき姿高齢者が急変時を含め、入退院があっても切れ目のないケアを利用でき、生活を継続している。高齢者が急変時を含め、入退院があっても継続して状態を維持し、悪化が予防されている。退院後に、円滑な療養・介護へと接続できる環境が整っている。
現状分析と課題抽出要介護者の入退院連絡率は85%以上を維持しているが、医療機関からケアマネジャーに対する退院前連絡が退院日直前になっており、退院後の介護サービス調整が間に合わない場合がある。北まるnet救急医療情報へ登録している高齢者は全体の約10%に留まり、急変時にかかりつけ医、既往歴や投薬内容が分からず、救急医療機関で治療の開始が遅延している場合がある。要介護者の退院時療養指導と本人の暮らしに対する意向の両者を踏まえたケアプラン立案が難しく、疾病の再発や悪化を招いている場合がある。訪問介護サービス資源や介護支援専門員が不足しており、要介護者のケアプラン立案や生活支援サービスが不足し、介護の重度化を招いている場合がある。在宅や施設で暮らす住民が急変時に本人の望む医療・ケアの意思決定をしておらず、搬送先の救急医療機関で救命か延命かの処置に家族が苦慮している場合がある。急変時に本人の望む医療・ケアの意思決定をしておらず、本人の意思が実現できていない場合がある。
2029年度の到達目標医療機関からケアマネジャーに対する退院前連絡が5日以上前にあり、退院後のスムーズな介護サービス利用につながっている。北まるnet救急医療情報へ登録する利用者が北見市内高齢者の30%になる。特に単身世帯や高齢者夫婦世帯の70%以上が北まるnet救急医療情報に登録しており、救急車要請時に救急隊へ活用され、搬送時間の短縮につながっている。ケアマネジャーが立案するケアプランに利用者本人の暮らしに対する意向が記述されており、入院時からの退院支援に活用され、入院期間の短縮につながっている。生活支援体制整備事業の推進により、北見市内の多くで住民主体による体操教室や生活支援サービスが実施されており、軽度者は住民が、要介護の重度者のケアは介護職員へと役割分担が進み、退院支援の際に介護職員等が不足していてもケアマネジャーが住民主体のインフォーマルサービスを活用できている。急変時に本人の望む医療・ケアの意思決定ができており、情報共有の仕組みができている。急変時に本人の意思を実現できるよう、救急隊、医療機関、ケアマネジャー等の協力により、搬送ルールや医療機関での対応に一定の取り決めをまとめた「北見市版DNARプロトコール」が策定され、実施できている。
Do(実行) 2024年度の活動入退院における医療機関とケアマネジャーとの連携についての現状と課題を把握するため、ケアマネジャーと有床医療機関を対象に入退院連絡調査を行う。調査結果は北見市が開催する「北見市医療機関・在宅ケアマネジャー連絡会議」にて報告するとともに、課題について協議する。医療・介護連携窓口の把握と周知を行う。入退院等調整のための窓口一覧を北見保健所・保健所管内町と共同し更新するとともに、令和6年10月に配布する。平時の連携のための窓口一覧を北見保健所・保健所管内町と共同し更新するとともに、令和6年10月に配布する。対象は医療機関、歯科医院、 薬局、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、 小規模多機能型居宅介護とする。在宅医療・救急医療ワーキングチーム会議を開催し、以下の取り組みを実施する。患者、利用者や入所者に対するACPの推進在宅ケアマネジャー等に対するACPの研修を企画、実施する。地域住民に対しACPの啓発を目的とした市民講座を企画、実施する。施設入所時におけるACPの引継ぎのあり方について検討する。心肺蘇生を希望しない高齢者に対する救急医療についての課題を調査する。救急隊におけるDNAR意思の救急要請事案について調査を行う。救急医療の現場における心肺蘇生を希望しない高齢者に対する診療上の課題について調査を行う。心肺蘇生を希望しない高齢者が救急要請した場合の不搬送ルール(要件やプロトコル等)について検討を行う。高齢者施設に対する救急対応の向上高齢者施設に対する救急対応やACP等の課題についての調査を実施し、短期及び長期の課題抽出と対応策を検討する。多様な種類の高齢者施設の意見を収集、反映させるため、本会議メンバーにサービス付き高齢者向け住宅等の高齢者施設代表を加えることを検討する。
Check(評価)到達目標に対する進捗医療機関からケアマネジャーに対する退院前連絡が5日以上前の割合。北まるnet救急医療情報へ登録する利用者割合。高齢者単身世帯および高齢者夫婦世帯の登録割合。ケアプランに利用者本人の暮らしに対する意向が記述されている割合。
Action(改善)改善の実施(評価の視点)令和6年度の取り組み状況を踏まえ検討を行う。
  • 看取り・日常の療養支援
Plan(計画)地域の目指すべき姿本人が望む医療・ケアの意思を表明している。本人の希望に応じた看取りの体制が整い、その意思が実現できている。通院が困難になった際も訪問診療や訪問看護サービスを受け、住み慣れた場所で生活できている。心身機能が低下してもケアマネジャーや生活支援サービスが整い、住み慣れた場所で生活できている。
現状分析と課題抽出死期が迫っていない利用者に対しACPを提案しているケアマネジャーは8.7%である一方で、状況に応じACPを提案しているケアマネジャーは66%であった。高齢者施設で入所者の急変時に備え事前指示書を作成していないと回答した施設が61%であり、急変時の本人・家族の意思が反映、実現できていない場合がある。救急医療機関では本人の意思が確認できない場合、代理意思決定者(家族など)がいない場合や、その場にいても判断がすぐにできないことがある。自宅や施設で看取りを行う方針だったが家族や職員が慌てて救急搬送を要請した場合、救急隊の不搬送のルールがなく、搬送せざるを得ない状況がある。人生の最終段階における医療・ケアに対する住民の関心が低く、急変時に納得した意思決定ができていない。訪問診療を実施できる医療機関が限られており、訪問診療を希望しても受けられない場合がある。心身機能が低下した場合、家庭の介護力が不足して施設等へ入所している住民がいる。
2029年度の到達目標北まるnet救急医療情報へ住民のACPやDNARを登録する利用者が北見市内高齢者の30%になる。特に単身世帯や高齢者夫婦世帯の70%以上が登録しており、救急車要請時に救急隊へ活用され、本人の医療・ケアに対する意思の実現につながっている。急変時に要介護者の望む医療・ケアの意思決定が平時からケアマネジャーとともに70%以上できており、かつその情報共有の仕組みができている。急変時に本人の意思を実現できるよう、救急隊、医療機関、ケアマネジャー等の協力により、搬送ルールや医療機関での対応に一定の取り決めをまとめた「北見市版DNARプロトコール」が策定され、実施できている。訪問診療を希望する住民が訪問診療を受けられる体制が整っている。心身機能が低下しても住民主体の生活支援サービス等が整い、住み慣れた場所で生活できている。
Do(実行) 2024年度の活動在宅医療・救急医療ワーキングチーム会議を開催し、以下の取り組みを実施する。(再掲)患者、利用者や入所者に対するACPの推進在宅ケアマネジャー等に対するACPの研修を企画、実施する。地域住民に対しACPの啓発を目的とした市民講座を企画、実施する。施設入所時におけるACPの引継ぎのあり方について検討する。心肺蘇生を希望しない高齢者に対する救急医療についての課題を調査する。救急隊におけるDNAR意思の救急要請事案について調査を行う。救急医療の現場における心肺蘇生を希望しない高齢者に対する診療上の課題について調査を行う。心肺蘇生を希望しない高齢者が救急要請した場合の不搬送ルール(要件やプロトコル等)について検討を行う。高齢者施設に対する救急対応の向上高齢者施設に対する救急対応やACP等の課題についての調査を実施し、短期及び長期の課題抽出と対応策を検討する。多様な種類の高齢者施設の意見を収集、反映させるため、本会議メンバーにサービス付き高齢者向け住宅等の高齢者施設代表を加えることを検討する。北見市医療・介護連携推進事業に係る普及啓発委託事業(住民主体のまちづくり)の開催に協力する。本人の望むこれからの暮らしや緊急時の意向が反映されるよう、ケアマネジャーをはじめとした意思決定支援に関する研修会を開催する。生活支援体制整備事業における住民主体の体操教室や生活支援サービスの推進に協力する。
Check(評価)到達目標に対する進捗在宅看取り割合(自宅死、老人ホーム死)。→令和4年度までしか確認できないので判定は令和7年度となる。看取りを実施する体制(医療機関、介護事業者数)。ACP 等意思決定支援の医療機関や介護保険施設での実施状況。終末期救急搬送件数とDNARの実施数(割合) 。
Action(改善)改善の実施 令和6年度の取り組み状況を踏まえ検討を行う。
  • 在宅医療・介護連携推進事業における医療・介護連携に関する相談支援
    • 医療機関や介護保険事業所等からの医療・介護連携に関する相談支援を行う。
    • 医療介護連携に関する研修会の講師依頼等に対応する。
  • 北見市医療・介護連携支援センターの周知
    • 医療・介護連携の課題や取り組み周知のため、「北見市医療・介護連携支援センターニュースレター」を3回発行する。(13号~15号)
    • 北見市の在宅医療介護連携推進事業の活動や医療・介護連携に関する話題等の周知のため、「北見市医療・介護連携支援センターホームページ」を更新する。なお、同ホームページ掲載の更新周知のため、同センターのフェイスブックも活用し、周知を行う。
  • 第8次北海道医療計画において、北見在宅医療圏域に北海道が指定する「在宅医療に必要な連携を担う拠点」の活動に北海道北見保健所とともに協力する。

連携当事者と連携調整者

「連携当事者は連携調整者になれない」という話をする。

連携を行う者には、連携当事者と連携調整者の二者が存在する。

住民が地域で安心して暮らす目的のため、医療提供体制や介護事業所が抱える課題解決の活動は「在宅医療介護連携推進事業」と呼ばれ、全国の各地域で精力的な活動が行われている。よくある取り組みの一つに「地域における入退院時の連携ルール」がある。利用者が医療機関へ入院した際にケアマネジャーが医療機関へ情報提供し、退院前に医療機関がケアマネジャーへ連絡をするルールを地域全体で決めようとする取り組みだ。

皆で課題を話し合い、解決方法を検討して実行する。最初のうちは調子よく物事か運ぶがすぐに限界がくる。連携のためのルールを守らない者(機関)が現れるからだ。地域連携とは「地域で協力し合うために皆で守るルール」のことだ。だからルールを皆がいかに守るかがとても重要となる。しかしルールを守らない者にも言い分がある。「そのルールは使いづらい」とか「従う理由が合意できない」などだ。なので話し合いをするのだが、この話し合いが非常に難しい。すべてのルールが誰にとっても使いやすくて満足するものではないからだ。この辺りからメンバーである連携に直接関わる当事者(病院の連携担当者やケアマネジャーなど)―これを「連携当事者」という―だけでは限界がやってくる。

話し合いの決着点、いわば連携の調整とは、互いの言い分を吐き出させ、相互に相手の言いにくいことを受け入れ、妥協点を見つける作業なのだか、これを当事者同士で実施するのは難しい。そこで、これを調整する「連携調整者」の出番となる。連携調整者とは、中立的で、医療と介護の両者から一定の信頼を得ている者が望ましい。行政がその役割を担うのがふさわしい。

医療機関と在宅ケアマネが公平で平等な立場で「互いのできること、できないこと」が組織同士で話し合われる場があり、そこで地域の連携課題が話し合われ、地域の多くの機関が参加しており、ルールが修正されていく。そういう場を維持するには「連携調整者」の存在が不可欠だということを地域のメンバーの皆が認識することが大切だろう。

通院困難者と訪問診療

2020.5.27

令和2年度の当センターの活動予定の一つに「通院困難患者の調査と課題抽出」がある。

これは在宅医療介護連携推進事業における「医療・介護連携の課題抽出と対応策の検討」にあたる。

疾病を抱えた要介護者の治療継続の一つに通院手段の確保があり、適切な医療を受けるために生活支援たる介護サービスの協力が必要となる。

今年度の具体的な取り組みは、通院困難利用者の実態、訪問診療や通院介助サービス量の需要及び供給量の調査、供給増へ向けた関係者との課題抽出を行う予定だ。

昨年度当センターが居宅介護支援事業所を対象に行った調査では、北見市内で要介護認定を受け訪問診療を受けている利用者は170名いた。また訪問診療が必要となる可能性のある利用者数は220名であった。ちなみにその約半数が「通院介助に身体介護をサービスをつけている」ことであった。なので今年度は通院介助サービス量について詳しい調査と課題を見つけることにした。

訪問診療の対象者を調べる方法として、前述の「通院介助に身体介護をサービスでつけている」や「受診すると(待ち時間などが長くて)2~3日体調が悪くなる」などの該当者を調べると「需要量」が分かる。そうすると訪問診療の現状件数からどのくらい今後の「供給量」を増やせばよいかは引き算できる。例えていうなら今立っている山の位置と、これから登ろうとする山頂との差ということになる。上記の調査結果からは220名の訪問診療の需要があることになる。

理屈は簡単だけれど難しいのが「訪問診療を求める患者数」がイコール「訪問診療をすべき患者数」ではないことだ。

医療と介護の連携の意味の一つは「限られた医療と介護資源が協力し合い地域住民が長く在宅で暮らせるようになる」ことであるから、できるだけ訪問診療を必要しない身体状態が続くことが望ましい。安易に訪問診療を選択できる環境は「限られた医療と介護資源の活用」という視点からは望ましくない場合もある。なぜなら都市部と比べ地方は医師数が少ない。外来診療を訪問診療に切り替えることはその医師の外来診療の時間を削ることになる。在宅医療支援診療所や訪問診療が増えることは望ましいけれど、ただ増やしたとしても地方では医療資源の診療総量が増えない(どころか減少している)ため根本的な解決は難しい。

じゃあどうしたらいいのか。課題の根っこを考えてみた。訪問診療を必要とする患者「像」の関係者間の認識の共有ができていないことではないかと考えた。それは通院診療から訪問診療へ切り替えるべき患者の状態の基準を明らかにすることではなく、通院介助サービス量が不足しているから訪問診療すべきだなど、社会的な理由を訪問診療の理由にすることでもない。

関係者のもつべき認識は基準やコスト評価ではなく「通院困難イコール訪問診療」という呪縛から一旦は離れ、訪問診療以外の通院方法、または通院頻度を下げる方法(オンライン診療)など、なるべく今の生活スタイルを維持するべきだという認識が関係者で一致して個々のケースへ対応していくことのように思えた。

基準やルールづくりなど、地域や医療と介護の連携を推進する事業に取り組む者として耳の痛い結論となった。「急がば回れ」ということか。

(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援」のはき違え

2020.6.8投稿

在宅医療介護連携推進事業で示された事業は8つある。その1つに「(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援」があり、全国で在宅医療・介護連携に関する相談窓口が設置されている。これは医療・介護関係者の連携を支援するコーディネーターを配置し、在宅医療・介護連携取組を支援するというものだ。

この取り組みの実施主体は市町村直営、地域包括支援センター(委託法人)などが殆どだが、一部の自治体では社会福祉法人や医療法人が委託されている。相談の対象は医療・介護関係機関のみの場合もあれば地域住民も含め実施するなど対象もバラバラになっている。

委託されたセンターは相談窓口なので「相談を受けると」いうスタンスで取り組む。そればそうだろう。私もこの一年そのように感じ実施してきた。でもここ最近違う思いを持つようになった。それは在宅医療・介護連携に関する「相談を受ける」のではなく「相談(事)を解決する窓口」だということだ。

介護保険制度ができて20年が経過した。ケアマネジャーの数も増え、質も向上した。医療機関への受診の仕方だとか、どの医療機関が訪問診療を実施しているかなどは、ほぼ既知のこととして、居宅介護支援事業所等の事業所内では共有されている。医療・介護連携が進んでいる地域や小規模の自治体などは医療・介護資源に関する不明点は極めて少ない。ゆえにこの「相談窓口」が役割を発揮することは少ない(と思われる)。

相談が少ないとその地域の在宅医療・介護連携に関する問題も少ないかというと、そうでもない。問題はどちらかというと「問題ないと思っていること」自体が問題だということもある。

特別養護老人ホームへ入所していた利用者が肺炎で救急病院へ入院した。経口摂取が出来ないので経管栄養を導入することになった。肺炎の治療は終了したが、経管栄養はその特養では管理できないので特養退所扱いとなり、医療機関は受け入れ可能な転帰先を探す。

昔からそのような取り扱いをしてきた場合、関係者はこのことに課題や問題を感じるだろうか。

「サル化する世界」(文藝春秋)で内田樹氏は現代日本はサル化していることに警鐘を鳴らす。

先ほどの特養の例えだと、経口摂取困難で経管栄養になった方が救急病院へ入院し、退院や転院が出来ないでいると病院の病床が一杯となり、いつかは肺炎なった入所者がその救急病院から満床で入院を断られるかもしれない、という過去と未来を含んだ視点で「今」を考察できないということを想像できない状態ということになるだろう。

内田は「サル化した人間の特徴は『過去を反省しない』」『未来に対して見通しを持たない』ことです。」という。

このままこの状態が続いたらもっと大きな問題になる。こういう「未来への見通し」を持ち、今は問題となっていなくても未来に問題となる可能性や危機を感じ「現在の問題ないと思われる出来事」を問題と感じることが求められる。

「相談を受ける」のではなく「相談(事)を解決する窓口」というスタンスでいることが在宅医療・介護連携に関する相談窓口の役割なのだと思う。